2011年8月15日月曜日

Microsoft Skype+Facebook対Googleの構図

5月にSkypeを$85B(約6,800億円)で買収したマイクロソフトは、この買収によりXboxゲ-ム機でもビデオ通話が出来るようになる事をアピ-ル。しかし実際には買収発表当日にMicrosoft CEOのSteve Ballmerと元Skype CEOの Tony BatesはFacebookのCEO Mark Zuckerbergに会い戦略的パ-トナ-シップについて相談。その後7月6日にFacebookがSkypeをサポ-トする発表が実現し、Facebookユ-ザはチャットのペ-ジからビデオのアイコンをクリックするだけでビデオ通話が可能となる。FacebookをはじめとしたSNSはサ-ビス自体が無料な為、収益の多くは広告が占める状況となっている。そこで各SNSはユ-ザの数を増やすと共に、ユ-ザの滞在時間を長くする事で広告の価値を上げる事を重視している。現在Facebookは7億5千万ユ-ザ(グロ-バルベ-ス)を持ち、その多くはチャットやメッセ-ジ等で多くの時間をFacebook内で過ごしているが、そこにビデオ通話を追加する事で一段と滞在時間を延ばす事を目指している。一方Microsoftにとっては買収したSkypeをFacebookに提供する事で、ビデオ通話の無料版から有料サ-ビスに移行する顧客の獲得を狙う事ができる。又Microsoftは2007年にFacebookの株を1.6%入手し(1.6%と言っても現時点の価値は約1,000億円)、検索エンジンBingとFacebookの統合を行う等、以前からFacebookとの間で強い戦略的関係を構築してきている。その背景にはGoogleへの対抗があり、大きなユ-ザベ-スを持つFacebookと組む事でGoogleへの対抗を強化している。


一方Googleは多くのユ-ザが検索で通過するだけの事が多く、SNSと比べて滞在時間が短時間となっている。そこで6月にHangoutsと言うビデオチャット機能を持つ新SNS Google+を発表。Hangoutsは最大9人までのグル-プ対話を提供し1対1のSkypeを差別化している。その影響か、Google+は発表後2週間で1,000万ユ-ザ登録となっており、市場で大きく注目される状況となっている。と言えでもFacebookの7億5千万ユ-ザに追いつくのは容易ではなく、今後両社はビデオ通話を1つの機能として、Facebook+Skype対Googleで競合していく事となる。又ビデオ通話ではAppleのFace TimeがiPhone, iPad等のモバイル機器市場で大きなシェアを持ち、モバイル機器市場ではGoogle, Skype共に水を開けられている状況となっている。そのAppleはFace Timeのコ-ドをオ-プンにし、サ-ドパ-ティ-が開発出来るようになる事を公言。Google+のHangoutもオ-プンにする可能性が指摘されているが、既に多くのユ-ザを持つSkypeはオ-プンにする可能性が低いと見られており、今後各社の対応が市場でどう受け入れられていくか興味が持たれている。

成長/下降の地域差があるOutsourcing市場

アメリカ市場でのニ-ズ低下・大型商談減少等により第2四半期のワ-ルドワイド・アウトトソ-シング市場が18%減少した事が発表される。(金額は$16.4B) そのアメリカの契約数は前年度比-1%とほぼ同等であったが、大型契約の減少が響き契約金額では前年度比-51%と半減となる。一方契約金額が$25M以上のアウトソ-シングはA/P地区で前年度比+55%、EMEAは+13%と他の地域では大きな成長が見られ、契約継続率でも前年度比+30%を達成。地域により大きな差が出る結果となるが、一部の大型商談を除くと成長傾向は継続しているとの見方が出来る。又アウトソ-スサ-ビス提供で中心的な役割を担うインドでは、業界第1位のTCS (Tata Consultancy Service)が第2四半期売上げ$2.4B(前年度比+34.4%)、第2位のInfosysは$1.7B(+23%)と共に好調な業績を発表。但しその内容は殆どが$25M以下の案件となっている。


このような状況の中イギリスの大手企業である保険のAviva、通信のBritish Telecom/ New Call Telecom等が相次いでインドにアウトソ-スしていたコ-ルセンタ-業務をイギリスに戻す事を発表。イギリスでの高失業率・インドの価格高騰・母国でのサポ-トによる顧客満足度向上等が背景となる。今後もグロ-バル・リセッションが続き、本国での失業率対策ニ-ズ高まりや新興国のコスト高騰が拡大するとアウトソ-シングの見直しが進み、イギリスのような事例が他国まで拡大する可能性も指摘されている。

HIPAA非準拠でUCLA medical centerに罰金

米国の医療保険の相互運用と説明責任に関する法律HIPAAでは患者1人1人の情報に対する機密性確保や脅威・危険への対策等が定義されているが、医療機関によっては未だに徹底出来ていないとの指摘がある。又オバマ政権が推進するe-Health政策では2014年までに米国の医療記録を電子化する目標を持っているが、電子デ-タに対する不安が大きく残っており医療記録等の電子化も思うように進んでない状況となっている。このような状況の中US Department of Health and Human Service (米国保険社会福祉省)UCLA大学のMedical centerHIPAA非準拠により$865,000の罰金を課した事を発表。また罰金だけでなく、HIPAA非準拠項目の対策と共に関係者全員の教育プログラム実施が求められ、その確認として3年間監査が入る事が決定。HIPAA1996年制定後2003年にはセキュリティに関する最終的な規則が発効されているが、その後もHIPAA対応の遅れや、違反行為がある医療機関の存在は以前から指摘されてきていた。そこで今回UCLAに罰則を与える事でDepartment of Health and Human Serviceは違反者に対して真剣に取組む姿勢を見せる事となる。今回の事例では具体的なHIPAA非準拠項目が示されていないが、2008年にUCLA病院を利用した俳優Tom CruiseFarrah Fawcet等の個人医療記録がUCLAの従業員及び医師により不正にアクセスされた事件が対象になったと見られている。今回のUCLAの事件は有名人の個人記録に関わっていた為に注目度も高まる事となった。但しこの動きにより今後米国内でHIPAA対策と共に医療機関の情報管理・電子化が一段と進む可能性があり、今後の米国医療市場進展の一つの要素になる可能性と捉える事も出来る。